失敗した話。
このコロナ禍において在宅勤務日という実質休みのような日が週に1度設定されている。
今日がその日だ。
問い合わせの連絡は何回かあったけど、あとは自由に過ごしていた。
明日の弁当の用意もできたし、あとは風呂に入って寝るだけだ。
何もしないと昔のことをよく思い出す。
昔営業マンデビューをしたころの話。
弊社は新入社員として入社したのち、数週間の集合研修を経て支店に配属となる。
同じ釜の飯を食い絆を深めた同期とは簡単に離れ離れになり、一人で凝り固まった企業文化の渦に投げ出されるのだ。
(もっとも俺は同期と仲良くなかったんだけどね!!)
一年間事務の仕事を教わりながら、自社の金融商品(といっても預金商品なんだけど)についての知識や伝票、現金勘定等いろいろな実務に慣れていく。
どこの支店にも必ずと言っていいほど「お局さん」がいて、女性の職場特有のドロッとした雰囲気の中、男一人ちやほやされながら仕事を覚えていくのである。
悪い気持ちはしなかったが、正直面倒くさいなって思っていたし、くだらない愚痴を聞くのは面白いものではない。
なにより嫌だったのは極度に面倒くさがりな奴が多かったってっことだった。
・新しいことを覚えようとしない
・自分仕事の範囲を勝手に決めてそれ以上はやらない
・客が来ない時間はおしゃべりして、電話もろくに出ない
・そのくせ上司や、出来の悪い営業の愚痴ばかりを言っている
etc...言い出したらきりがない、、、
とにかく、やりたくないが故にやれない言い訳を言うやつが多すぎた。
そんな奴らは大嫌いだった。仕事としてやる以上やらねばならないことがある。
どうしたらできるのかを考えることもせず、最初からあきらめているその姿勢に腹が立ってしかたなかった。
こんなことを言っている自分自身も決して優等生ではなかった。
だけど、そんなことを思いながら日々過ごしていたのは事実だった。
2年目になると営業係としてデビューする。
「準備をして、同行期間があって、独り立ちする」というのがセオリーだった。
だけどどうしてか自分の時だけそうではなかった。
突然営業に任命され、乗ったこともないスーパーカブにまたがり、20歳くらい年の離れた先輩から引き継ぎを受けた。
引き継ぎ期間は4日間。
新人相手の引継ぎ期間としては異例の短さだった。
しかも最終日、引継ぎがすべて終わることなく先輩は目の前で事故った。
子供の飛び出しによるものだったが、けが人が出るような事故ではなかった。
とはいえ人身事故だったから救急車やらパトカーやらと大騒ぎになった。
そんなこんなで引継ぎが完了する間もなく、引き継ぎ期間は終了し、前任者は他の支店に異動していった。
こんな丸投げがあっていいものか、、、
この時初めてだったと思う。本気で辞めたいと思った。
営業マンとして独り立ちしてからは散々な日々だった。
まず道がわからない。
(なぜスーパーカブでふ頭のコンテナヤードまで集金に行っているのか・・・)
顧客データと実際の訪問先が違うなんてことが当たり前にあった。
ふざけるなっておもった。
失敗1
パトカーにつかまった。
多分営業デビューして3日目くらいだったと思う。
二段階右折をしなければならない道路でふつうに右折してしまったのだ。
右折レーンは3車線に含めないという謎の俺ルールを適用した時点でもう運命は決まっていたんだと思う。
事故らなくてよかっと思っている。
失敗2
免許証を出せと言われた。持っていなかった。
オフィスのデスクに財布ごと忘れたのだ。
免許証不携帯だと運転できないことも知らずに完全に足止めをくらってしまった。
客とのアポイントがあって上司と現地集合の約束もしていたし、気持ち的に二度は死んでいたと思う。
てか死んでる。
死を覚悟してその日同行予定の上司に免許証を持ってこさせた。
失敗3
これは営業デビューから2週間目くらいの時だったと思う。
鍵をなくしてしまった。営業バイクの鍵だ。
客先から駐車していたところへ戻ると、さっきまで動かしていたバイクの鍵がどこにもないのだ。
どこを探しても落ちていないし、カバンのなかも、ポケットの中にもなかった。
先輩に電話して自転車でスペアキーを持ってきてもらった。
この時の先輩は輝いていてなんかとても格好よく見えたよ。(そんなに仕事はできない先輩だったけどな)
失敗4
印鑑をなくした。
これはあらゆる書類に押印する印鑑で、突然の営業デビューだったから集金用の印鑑としても使っていた印鑑だった。(集金用は専用の印鑑があるのだけど急すぎて納品が間に合ってなかった)
始末書を書く羽目になった。俺も直属の上司も。
別室に呼び出されて上司に頭殴られたのを覚えている。
この恨み晴らさでおくべきか・・・!!!
これらはすべてデビューから一か月以内の出来事である。
一生分の失敗を経験した気がするし、命がたくさんないと務まらない仕事だと思った。(自業自得)
もし将来、自分の部下が同じ失敗をしたとしても許してやろうと思っている。
こんな自分でもかならず誰かの役に立つ時が来るのだから、多少の失敗は問題にはならないと今は思う。
自分にも人にも厳しいことが良しとされている風潮がある。
でも自分にも人にもやさしくて、希望に満ち溢れているほうがハッピーだと思うな。
俺はハッピーになりたい。
おわり。